ラダック・ザンスカール 旅の記録 16

 ザンラ、城の跡。
 ザンラ王朝はかつてはザンスカールを二分していたパドゥム王朝と並ぶ力のある王族だったそうだ。山の上に建つ城跡には車で登っていける。現在の王族の末裔は村の中心に拠点を移している。城に入るための鍵をもらいに、大きな屋敷にお邪魔する。庭に入ると犬が一斉に吠え立てる。何頭も飼っているらしい。裕福なのだなとわかる。



 鍵をもらい車に乗り込み、村の中を走っていると、車を待っているのか女性が何人も集まっていた。運転手がゆっくり彼女たちのところへ車を近づける。窓を開けて運転手が私の顔を彼女たちに見せる。またか、と思う。運転手の知り合いらしく、私のことを現地の言葉で話しているのがわかる。すごく見られる。嫌だなと思う。女性が私に何かを言い、運転手が通訳をする。「君のことを娘のようだと言っている」と英語で言われる。彼といるとこういうことがよくあると思う。ギャツォとはそうならない。女性扱いをしてくれるのはいいが、見せ物にしないでもらいたいと、ムッとする。若いと言われれば全ての女性が喜ぶと思っているのだろうか。その日は簡単に、腹が立った。


 山の上の城の、そのさらに上にはもっと大きな山があって、暗い色の山肌に白い建物が浮かんでいるように見える。
 車で登ってくると城の前にはたくさんのチョルテンが並ぶ。




 ここが鍵のかかっている入り口。大事なものがある部屋には鍵がかかっている。
 中に入るとさらに階段があり、上にはキッチンがあった。キッチンの柱には菊の花のような彫刻。日本の家紋と似ている。そう言えば、プクタルで菊に似た白い花が足元に咲いていた。カモミールじゃないかと思ったけれど、正確にはわからない。ガイドのギャツォはガイドの仕事の他に薬草を採る仕事をしていると、後になって知った。ダライラマが手掛ける病院に勤めているのだそうだ。彼にもっと植物について尋ねればよかったと、今頃になって後悔する。でも、聞かれたことだけを答える、頼まれたことだけを行う、彼のそういう姿勢に助けられていた気がする。











 石に描かれた仏像の絵をいくつか見る。仏教だけれど、どこかニュアンスが違うように感じる。カシミールは違う宗教と文化が混在していると本で読んだ。15年も前に読んだ本だけれど、ロマ(ジプシー)の源流はカシミールなのではないか、と文化を追って本にしている人もいる。ヒンドゥーぽくもあり、ペルシャ文化も混ざっているのだろうか。


 城の前からザンラの町を見下ろすことができた。農地が丸い。この後行く、ストンデというところでさらにたくさんの農地を見ることができた。


 ストンデ・ゴンパ。
 この後行く、カルシャ・ゴンパに次ぐ大きなゴンパ。崖の上にゴンパはあり、車で移動する。ザンラで見た景色よりもすぐ近くで畑の様子を見下ろすことができる。なんて綺麗なんだろうと、何枚も写真を撮った。




 古いお堂に鍵を開けてもらい、中を見せてもらう。3つほどの部屋を見せてもらっただろうか。ギャツォにヨガをやっていることを話していたからか、「これがミラレパだよ」と教えてくれる。下の写真、耳に手を当てて、浮いている人がその方。
 ミラレパはチベット仏教カギュ派の宗祖でありながらヨガ行者でもある。ザンスカールの寺院にはミラレパ、ナーローパにまつわる寺院がある。私もあまりよくは知らないけれど、ヨガや密教を探っていると、目にとまる人物。







avalokiteshvara
観音菩薩






 最後のお堂でお面を見る。お祭りの時にかぶるのだろうか。ヤクなのか牛なのか。それから鹿頭。長野の諏訪にも鹿頭にまつわる文化があったと、神社を調べていて知った。この飾りはそんなに古いものではない気がする。
 ストンデ・ゴンパからはヒマラヤの雪山がよく見えた。あの山にも名前があるのだろう。どうも、山梨から見える甲斐駒ヶ岳と被って仕方ない。遠くに来たのに、どこかいつも眺めている景色に似ている。標高だってまるで違うのに、おかしいなぁーと笑えてくる。











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