投稿

6月, 2021の投稿を表示しています

ラダック・ザンスカール 旅の記録 01

イメージ
 ラダック、ザンスカールのことを書き始めようと思う。  もうすぐ二年が経つ。  振り返れるタイミングを待っていたけれど、こんなに時間がかかるとは思っていなかった。帰国した直後、送り出してくれた友人にお土産を持って訪ね、その時に少し話したけれど、まだ自分でも噛み砕くことができなくて、旅の何かを話せていたのかさえわからない。話したくなかったのかもしれない。  旅は終わったはずなのに、終わった気がしなかった。押し出されるようにしてザンスカール行きを決めたけれど、旅を終えてもずっと、始まったことを意識しているようだった。何が始まったのか、何を見つめることを始めたのか、ぼんやりとしていた状態から輪郭が見え始めたのはごく最近のことのような気がする。写真を整理し始めたのも最近だ。  去年は小説を書いていて、終わりの方まで書き進めることができたけれど、止まってしまった。フィクションよりも、事実を書く方が先なのかもしれないとふと思った。置き去りにしている物語がたくさんある。読みかけの本のように。  ラダック。この場所を知ったのは2004年だったと思う。  結婚して、その後にヘルニアになって、1年間治療をしていた。治療という名目で小説を書く時間を手にした。その頃たまたまWEBで開いた写真に目が止まった。書いている小説の舞台と重なった。写真に写るその場所がどこなのかを調べ、北インドのカシミール地方、ラダックと呼ばれるエリアなのだとわかった。標高3500、ヒマラヤが目の前に見え、チベット文化が残る場所。当時のチベットよりもチベット文化が色濃く残っているのだと調べてわかった。  小説の題材としてロマを追っていた。なぜロマを追っていたのか、それも、ロマの音楽を聴いて魅了されてやまなかったからだった。カシミール地方はロマ(ジプシー)の源流なのではないかと書かれている書籍を読んだ。ヨーロッパに移動を繰り返したロマの起源はインド・ヨーロッパ語族が大移動を始めた頃に遡ることができるのではないかと書かれていた。  カシミールは時代によって様々な文化が参入と移行を繰り返している。古代ペルシャ文化、仏教、チベット仏教、ヒンズー、ゾロアスタ。現在、カシミールの9割はムスリム。  カシミールというエリア、その中の標高の高い場所に惹かれるのはわかった。でもその写真の場所がラダックのどこなのかは特定できない。実際の...